安全性を重視して資金供給を絞り、投資を控えることも、金融を萎縮させる。
このように不況下では、金融を拡大して資産価値を引き上げる余地は、ほとんどなくなり、不況は長期化してしまう。
特にバブルの崩壊を経験した後の不況局面では、「バブルの反省」で、銀行や企業が危険も省みずに無闇に事業を拡大したからいけないということになり、リストラや体質改善を行う。
さらに、〈供給側〉の考え方で、「潰れる銀行や企業はどんどん潰して、効率のよいものだけを残せば、経済の活性化になる」ということがいわれる。
企業や銀行経営の健全化を促進して信用回復を計り、経済全体の流動性の上昇を狙ってのことであろうが、実態は倒産の不安を与えて株価を下げ、銀行の貸し渋りを促して、日本全体の資産価値を縮小し、景気回復を遅らせている。
そもそも、淘汰されて効率のよい企業だけが残るから、日本経済の効率が増すという考えは、不況期には成り立たない。
その産業に限ってみれば、平均生産効率はよくなるだろうが、社会全体では、倒産やリストラによって、失業という損害が生み出されるのである。
失業者はすぐに新たな就職先を見つけることができるという状況には、ないのである。
このように、不況期には、非効率部門の切り捨てという内向きの体質改善やリストラが行われ、個の企業や銀行にとってはよいことでも、社会全体に対しては、金融収縮と失業の増大という損害をもたらす。
本当は、このような時期には人材も設備も余っているため、投資の機会費用は低い。
そのため、社会的にはこの時期にこそ倹約ではなく、長期的な視野から技術開発や設備投資を行った方がよいのである。
また、魅力的な製品開発を行えば、冷え切った消費意欲を刺激し、景気を回復させることができる。
他方、同じリストラを好況期に行えば、余った人材や資源はすぐに他企業に吸収されて、有効に使われるため、社会全体の効率化につながる。
ところが、好況期には簡単に利益が得られるために、企業も銀行も安全性や効率性よりも事業拡大を目指し、ただでさえ不足している人材を奪い合うことになる。
また、失敗の危険が少ないために次と新たな商品を開発し、さらに消費意欲をあおる。
このように、民間の効率計算と社会的な効率の計算とが乖離し、個の銀行や企業にとってよいことと、社会にとってよいことが、景気の各局面で正反対になっている。
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